ダイエット中に気を付けたい貧血と運動の関係

今や男女関係なくトレーニングをする時代。

 

『トレーニングはスポーツをしている男性だけが行うもの』という古い考えがあるのであれば、今すぐその考えを改める必要がありますね。

 

しかし、いくら日本のフィットネス人口が増えてきているといっても身体の構造自体を変えることはできません。

 

特にトレーニングをしている女性が気を付けなければならないのは貧血です。

 

月経を始め妊娠や産後の授乳によって失われやすい女性の血液は、誤ったダイエット計画によって更に失われることがわかっています。

 

そこで今回は、ダイエット中に気を付けたい貧血と運動の関係について取り上げていきたいと思います。

 

第1章【貧血とは】

「私ちょっと貧血気味で・・・」

 

実際に体験したことのある方は、貧血の辛さを痛感していることでしょう。しかし貧血には程度があり、人によって感じ方は若干異なります。

 

そこでまずは貧血とはいったいどのような状態なのか調べていきましょう。

 

簡潔に言うと、『貧血は赤血球自体の減少や、ヘモグロビンの酸素運搬能力が低下した状態』のことを差します。

 

酸素は身体を維持するために必要不可欠なものであり、その酸素を血管を介して全身の細胞に運搬しているのが赤血球なのです。

 

∇ヘモグロビンとは?

ヘモグロビンは血色素とも言い、赤い色素を含むため血液は赤色を呈している。鉄を含む「ヘム鉄」とタンパク質でできた「グロビン」から構成されるヘモグロビンは酸素と結合する機能があり、この能力によって酸素を全身の細胞に運搬することができる。

そして、実は貧血には大きく2つのパターンが考えられます。

赤血球自体の数が著しく低下してしまうのか、それともヘモグロビンの酸素運搬能力が低下してしまうのか、その原因をはっきりしておく必要があると言えるのです。

 

WHO基準によるヘモグロビン濃度

成人男性は13g/dl未満、成人女性や小児は12g/dl、妊婦や幼児は11g/dl未満が貧血と診断される。

1.貧血による症状

一般的な貧血の症状を整理しておきましょう。

 

軽度の貧血であれば必ず症状が現れるという訳ではありませんが、

・顔色の悪さ(青白い)

・まぶたの裏や爪が白くなる

・疲れやすい

などの症状が頻繁にみられるようになります。

 

また筋肉が慢性的な酸素不足になると肩こりやだるさ、倦怠感なども現れるようになります。そして貧血が悪化することで動悸や息切れ、胸部痛を引き起こしてしまうのです。

 

当然も酸素を必要としており、頻回にあくびをしたりめまいや立ち眩み、酷い場合には失神を呈することもあります。

 

典型的な鉄分の不足による身体的症状に、爪や指先の異変があります。

 

爪が反ったり割れやすくなること、唇や舌先の炎症、そして氷を無性に食べたくなることも鉄分不足によってみられることが多くなりますので注意が必要です。

 

第2章【貧血にも種類がある】

それではここで、貧血の種類についてまとめていきましょう。

 

その中でも、特に女性や多くの運動を愛する方々に知っていただきたいものを取り上げていきます。

 

1.鉄欠乏性貧血

過度な食事制限による鉄分の摂取不足や、慢性的な出血よる単純な血液量自体の不足によって引き起こされる貧血のことを言います。

 

赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質は、鉄イオン(Fe)を利用して酸素と結合します。つまり鉄イオンがなければヘモグロビンが十分に作られなくなり、酸素を運搬する機能は著しく低下してしまうのです。

 

多くの貧血の方のうち70%が鉄欠乏性貧血と言われており、食生活や生活習慣などの問題を見直す必要がありそうです。

 

2.スポーツ性貧血

ダンスやランニングなど、激しい有酸素運動を行う女性は特に貧血になりやすく、本人だけでなくトレーナーや周囲も注意を払う必要があります。

 

夏場は特にをかきやすく、そして尿による水分の排せつ、また呼吸数の増加に伴う全身の必要酸素量自体の増加によって身体中の鉄分は消費されてしまいます。

 

これが貧血の引き金となってしまうのです。

 

またマラソンやダンスなどは足底に繰り返し衝撃がかかるスポーツであり、足底への衝撃によって同部位の毛細血管中を流れる赤血球が破壊される溶血が原因の貧血も報告されています。

 

第3章【貧血の原因】

貧血と言えばただの鉄分不足というイメージがありますよね。

 

確かに多くの場合、酸素の運搬を担うヘモグロビン生成に必要な鉄分の不足が貧血の引き金となります。

 

しかしその他にも貧血を引き起こす原因はあるのです。

 

1.鉄分の摂取不足

既に記載したように、基本的に貧血の70鉄分の摂取不足です。

 

ダイエットやボディメイクのために始めたトレーニング。そして良かれと思って食事の改善に手を付けたものの、体重を気にするあまり『食べないこと』ばかりに気を取られていませんか?

 

食事によって摂取できる鉄は、ヘム鉄非ヘム鉄2種類に分けることが出来ます。

 

肉や魚などの動物性食品に含まれるものを『ヘム鉄』、ヒジキやホウレン草、大豆などの植物性食品に含まれるものを『非ヘム鉄』と言い、同じ鉄分ではあるものの栄養素として吸収されるスピードがそれぞれ異なるのです。

ヘム鉄は、非ヘム鉄と比べ圧倒的に吸収率が高いのが特徴。

この事から、カロリーばかりを気にして野菜中心の食事を摂り続けているとヘム鉄が不足し、貧血となる可能性が高くなります。

 

2.タンパク質不足

ヘモグロビンは鉄を含むヘム鉄とタンパク質でできたグロビンから構成されています。

 

つまりどんなにヘム鉄ばかり摂取していても、タンパク質が不足してしまえばヘモグロビンの生成量は低下してしまうのです。

 

この事から、タンパク質の必要性がより高いことがわかりますね。

 

筋肉量をただ増やすだけだと思っていたタンパク質が実は血液成分の一つであり、よりトレーニング効果を高めてくれる血液に必要なものということがわかれば、あなたの食生活はおのずと変わってくるはずです。

 

3.必要量の増加

摂取不足だけでなく、体内で鉄分の必要量が多くなることも貧血の大きな原因となります。

 

思春期になると身体の成長が促され、大量の鉄分を消費するため貧血になりやすい時期と言われます。同様に妊娠中や産後の授乳期も鉄分の必要量が大幅に増加する時期であるため注意が必要です。

 

第4章【女性トレーニーが気を付けるべきこと】

体重を気にするあまり、食べることに関して恐怖心が出てくる方もいらっしゃいます。

 

『食べたら太ってしまう・・・』

 

食事に対して正しい知識を付けなければ、このように食べること自体が悪という考えに陥ってしまうのです。

 

そして男女において、食べないことによって貧血にリスクに大きな違いが生まれる理由は月経です。

 

フィギュアスケートや新体操など審美系競技の女性アスリートを対象にした調査によると、実に約17%もの選手が無月経と診断されているそうです。

 

過度な食事制限によって体重を一気に減らすことで身体のホルモンバランスが崩れ、引き起こされる無月経。

 

糖質や脂質などの身体のエネルギー源となる栄養素は勿論のこと、タンパク質や鉄分など身体の機能を保つ上で欠かすことが出来ない栄養素も足りなくなる可能性は多いにあります。

 

この状態に陥ると、ほとんどの場合で貧血を併発してしまうのです。

この問題をまとめたものが『女性アスリートの三主徴(Female Athlete TriadFAT』であり、女性のトレーニングをサポートするトレーナーや指導者は知っておく必要があります。

 

1.無月経と骨粗鬆症は食べなさすぎが原因

スポーツにおいて体重は重要です。階級別の競技や見た目の美しさを競うフィギュアスケートなどでは体重の影響は非常に大きいと言えます。

 

身体を細く軽くするために過度な食事制限を行った結果、身体は利用可能なエネルギーが不足します。

 

しかし食事を摂っていないため、代わりのエネルギー源を生み出すために筋肉を分解してエネルギー源として活用する結果、脳は飢餓状態であると認識し、月経を止めてしまいます(無月経)。

 

それにもかかわらずトレーニングは継続するため筋肉は更に酷使され、今度は骨を作るカルシウムまで溶け出してしまうのです(骨粗鬆症)。

 

このように、

①利用可能エネルギーの不足

②無月経

③骨粗鬆症

の3つをまとめたものが女性アスリートの三主徴という訳です。

 

しかし、アスリートレベルでトレーニングを行っている方は少ないですよね。

 

「そこまでキツイトレーニングをしている訳じゃないし、私には関係ないんじゃないの?」

 

このような疑問を持った方も多いと思いますが、ここで申したいのは貧血を起こす理由にトレーニング強度の問題ではないということです。

『もっと綺麗になりたい』

『みんなをアッと見返してやりたい』

 

ダイエットを成功させるためにモチベーションは大切な要素ですが、それ以上に大切な要素は方法ということを心に留めておきましょう。

無計画・無謀な食事制限は身体を飢餓状態に陥れ、無月経や骨粗鬆症のリスクを高める原因となる。心と身体のバランスが乱れ、リバウンドだけでなく様々な問題を引き起こす可能性が懸念される。

第5章【貧血を予防する栄養素と食材】

貧血を予防するために、ここで整理しておきたいのがやはり食事です。

 

鉄分の摂取量が足りているかは大切ですが、その他にも鉄分の吸収率を促進する栄養素、そして不足によって鉄分を阻害してしまう栄養素があるのです。

 

1.不足すると赤血球やヘモグロビンの生成が低下する栄養素

長期的な貧血症状は、ただ鉄分を摂るだけで解決しないケースが多いようです。

 

赤血球やヘモグロビンの生成に必要不可欠な栄養素は主に3あります。

①ビタミンB12不足

②葉酸不足

③タンパク質不足

ビタミンB12は神経や血液細胞(赤血球のもと)の成長を促す効果があります。

 

ビタミンB12を含む食品が摂取されると、まずは胃酸がビタミンB12をタンパク質から切り離します。そして胃酸に含まれる酵素(内因子)とビタミンB12が再結合して体内に吸収されるのです。

 

∇ビタミンB12を摂取できる食材

牛レバー、二枚貝、鶏肉、魚、乳製品など
そして葉酸もビタミンの一種であり、水溶性ビタミンであるビタミンB群に含まれます。

 

葉酸はタンパク質や細胞を生成するために必要なDNAの核を合成する役割があり、赤血球の数を増やすために必要となります。

 

また葉酸はビタミンB12と協力して血液を生成する役割があるため、摂取する際は上手く組み合わせることが重要と言えます。

 

∇葉酸を摂取できる食材

牛レバー、枝豆、アスパラガス、焼きのり、わかめなど

タンパク質は前述(※第1章参照)したようにヘモグロビンを構成するために必要な栄養素であることは間違いありません。

 

お米主体の食生活から小麦(パンや麺類)主体の食生活への変化も大きな要因の一つで、短時間で食べることができるパンを主食にしている方も多いのではないでしょうか?

 

脂質や炭水化物ばかりでなく、肉や魚、そして卵などからタンパク質を摂取することも貧血の予防には非常に重要なのです。

 

2.鉄分の吸収を阻害する栄養素

摂取することで鉄分の吸収を促進するものもあれば、当然吸収を阻害してしまう栄養素も存在します。

 

コーヒーや紅茶、緑茶に多く含まれるタンニンはその一つで、非ヘム鉄の吸収を阻害してしまいます。

タンニンとは種子に多く含まれる渋み成分で、ポリフェノールの一種でプロアントシアニジンとも呼ばれる。

また、玄米などに含まれるフィチン酸塩も同様に非ヘム鉄の吸収を阻害します。

このことから、やはり吸収効率の悪い非ヘム鉄を中心とした鉄分の摂取は避けたほうが良いと言えますね。

 

第6章【まとめ】

いかがでしたか?

 

トレーニングを長く続けるためにも、貧血について知っておく重要度はご理解いただけたのではないでしょうか?

 

血液の主な働きは酸素を臓器や全身の筋肉細胞に運搬することです。

 

赤血球に含まれるヘモグロビンによって取り込まれた酸素がその役割を担っているため、もし赤血球自体の減少やヘモグロビンの生成量が減ってしまえば途端に身体は酸欠状態に陥ってしまいます。

 

酸素や栄養が行き渡っていない状態では、どんなに良いトレーニングを行っても決して効率的とは言えません

 

そこで最後に、貧血を防ぐために必要なポイントをおさらいしておきましょう。

①動物性食品に含まれるヘム鉄を中心に摂取すること

②造血ビタミンであるビタミンB12と葉酸を摂取すること

③タンパク質を摂取すること

以前は鉄分の不足ばかりが貧血の課題として取り上げられていましたが、近年は様々な研究によってその実態が解き明かされています。

 

やはり過度な食事制限によるダイエットは身体に大きな負荷をかけることが目に見えていますね。

 

食事を減らすことばかり考えるのではなく、足りていない部分を補うことを視野に入れたダイエットに挑戦してみませんか?

 

広島のパーソナルトレーニングジムくびれ美人

山戸 勝道

 

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