筋膜リリースで痩せる?筋膜がダイエットの効果を高める理由
あなたが今まで試してきたダイエット法は何ですか?
糖質制限ダイエット?
ハードなワークアウト?
痩身エステ?
それでもダイエットに成功していないのであれば、もしかすると筋膜の繋がりを見落としているのかもしれません。
ダイエットの為にはトレーニングや食事は勿論大切ですが、今までの生活によって身体は歪んでいる可能性を見逃してはいけません。筋肉同士を繋ぐ筋膜まで歪んでしまえば筋肉は本来の力を発揮できないだけでなく、代謝が低下して太る原因にもなりかねないのです。
目次
第1章【筋膜って何?】
“膜”と聞くと、何かを包み込むような構造をイメージしますよね。実際、“膜”の構造は筋膜以外にも靭帯や関節包、腱膜、脊髄硬膜、大脳鎌、小脳鎌、小脳テントや肝鎌状間膜など、色々な組織のまわりに存在しています。
“筋膜”は文字通り筋肉を包みこんでいる膜のことで、表面だけでなく筋線維の1本1本にまで入り込んでいます。そして内臓を支える漿膜下(しょうまくか)筋膜と呼ばれる構造とも繋がっており、筋肉と内臓は全くの別構造ではないことがわかりますね。このように、これらの筋膜は全身に張り巡らされているため、「第二の骨格」とも呼ばれるほど重要な構造なのです。
このように全身に張り巡らされた筋膜は、その役割が故に凝り固まってしまうと途端に身体が機能不全に陥ってしまいます。これがコリや痛みの原因となったり、機能不全によって筋肉の活動が低下し、肥満に繋がるのです。
つまり、全身の不調には少なからずとも筋膜の影響があるということがわかりますね。
1-1.ダイエットと筋膜の関係
筋膜の柔軟性を取り戻すことで、血液循環の改善にも効果が見られます。血流が良くなることで筋肉に必要な栄養素が行き渡り、トレーニング効果の向上が期待できます。
もちろんこれだけではありません。人には誰にでも動きに“癖”があります。例えば椅子に座っているとつい同じ側の足を組んでしまったり、カバンを常に片側の肩にかけてしまったりと、あなたにも思い当たるものがあるのではないでしょうか?
そういった小さな“癖”が積み重なり、筋膜のこわばりを生み出してしまうのです。
そして筋膜のこわばりは、すなわち身体の歪みです。
「食事に気を付けているけどなかなか痩せない。」
「運動を始めてみても思うような結果がでない」
このような方は筋膜に着目してみるのもよいでしょう。
第2章【筋膜の種類】
さて、筋膜の存在を紹介したところで次は筋膜の種類について詳しく見ていきましょう。
筋膜の種類は大きく分けて7つあり、身体の至る所に張り巡らされています。今回は身体の前面と後面に存在する筋膜とダイエットの関係についてご紹介します。
2-1.スーパーフィシャル・バック・ライン(SBL)
スーパーフィシャル・バック・ライン(SBL)は足底から頭頂部までを、まるで亀の甲羅のように覆って身体後面の全体を繋ぎ、保護しています。立位の状態ではSBLは一つながりの統合された1本の連続したラインとして機能します。
2-2.スーパーフィシャル・フロント・ライン(SFL)
スーパーフィシャル・フロント・ライン(SFL)は足背から頭蓋骨の側面までの身体前面を保護しています。SFLは足趾から骨盤までと、骨盤から頭までの2つの部分から構成され、立位で股関節が伸展した際、統合された1本の連続したラインとして機能します。
第3章【筋膜の歪みチェック】
身体の前方と後方に姿勢を司る重要な筋膜があることがわかりましたね。次はあなたの普段の姿勢から、筋膜の歪みを紐解いていきましょう。
今回ご紹介した身体前後の筋膜に大きく関与する姿勢はいわゆる“猫背”と“反り腰”です。つまり背中が丸まった“猫背”姿勢ではスーパーフィシャル・バック・ラインは伸びきってしまい、比例するようにスーパーフィシャル・フロント・ラインは短縮してしまいます。
反対に“反り腰”ではスーパーフィシャル・バック・ラインの短縮によってスーパーフィシャル・フロント・ラインは伸びきってしまうのです。
つまり、あなたの身体のタイプによってアプローチすべき筋膜にも違いがあるということを表していますね。
それでは壁を使った姿勢のチェックを行っていきましょう。
まずは壁に背を向けて踵をつけるように立ちましょう。そして壁と上半身との間にできた隙間をチェックしていきます。
①頭
②背中
③腰
④お尻
この4つが筋膜のバランスをみるポイントとなります。
いわゆる背筋が伸びたような良い姿勢では壁に①頭②背中④お尻が同時に付きます。そして③腰は手のひら1枚分程度のすき間があります。(腰椎の生理的前弯)
しかし、下の写真のように壁にお尻より②背中③腰が先についてしまうようであれば、あなたは上半身が丸まった猫背である可能性が高いと言えます。この場合はスーパーフィシャル・フロント・ラインを伸ばすことから始めていきましょう。(参照記事URL→第5章【お腹の筋膜の働き】)
では次に、下の写真のように③腰が浮いてしまっている場合はどのような姿勢なのでしょうか?本来は生理的な脊柱の弯曲によって腰椎の前弯や骨盤の前傾は見られますが、壁と腰との隙間が手のひら2枚分以上空いてしまうようであれば過剰な腰椎の伸展、すなわち反り腰であると言えます。この場合はスーパーフィシャル・バック・ラインの短縮によるものが多く、背部の柔軟性を取り戻すことから始めていきます。(参照記事URL→第4章【背中の筋膜の働き】)
第4章【背中の筋膜の働き】
それでは具体的に筋肉と照らし合わせていきましょう。
□足底筋膜(足の裏)
↓
□腓腹筋やアキレス腱(ふくらはぎ)
↓
□ハムストリング(もも裏)
↓
□仙骨と脊柱起立筋(背骨まわり)
↓
□後頭骨の帽状腱膜(後頭部)
何となく聞いたことがあるような筋肉がいくつかありますね。
スーパーフィシャル・バック・ラインの主な機能とは、身体を完全に直立させた状態に保ち、老化よって背中が曲がってしまうような姿勢を防ぐことです。この姿勢を継続させるには、筋膜部やアキレス腱、ハムストリング、仙結節靭帯、胸腰筋膜、脊柱起立筋の連動が必要です。
このことからわかるように、姿勢改善の観点からこれら背部の筋肉を鍛える必要性がありそうですね。
しかし問題点が1つあります。スーパーフィシャル・バック・ラインが逆に柔軟性を失った場合も鍛えなければならないのでしょうか?
(参照記事URL→【トレーニングを始める人必見!あなたが姿勢改善すべき理由】)
この場合は先に筋膜をほぐすことから始めてみましょう
4-1.スーパーフィシャル・バック・ラインのリリース
①両手をテーブルに乗せ、身体を支えます。そして上半身と下半身を引き伸ばすように意識しながら、股関節を中心に身体を畳んでいきます。
②背筋を丸めないように注意しながら、背中からもも裏、ふくらはぎにかけてゆっくりと伸ばしていきます。これを20秒3セット繰り返していきましょう。
※顎を引きながら行うと、よりスーパーフィシャル・バック・ラインを伸ばすことができます。
4-2.ストレッチポール筋膜リリース
4-2-1.ストレッチポール背中リリース
筋膜はストレッチを掛けるだけではなく、しっかりとほぐすことでしつこいコリやいたみ、そして背中のたるみを引き締める効果が期待できます。
柔軟性や血流を改善させ、身体構造の根本からアプローチしていきます。
□方法
①ストレッチポールを身体に対して直角になるように置き、肩甲骨のやや下方を目安にストレッチポールを当てます。この時頸椎を手で支えるようにしましょう。
②膝を曲げて少し腰を浮かし、身体を上下にゆすりながら脊柱起立筋をリリースしていきます。これを1分ほど続けましょう。
□ワンポイント
背中のリリースに慣れてきたら、身体を斜めにするようにして背部全体に範囲を広げて行ってみましょう。
4-2-2.ストレッチポールふくらはぎリリース
ストレッチポールを用いてふくらはぎにある腓腹筋やヒラメ筋をほぐすことで、もも裏やお尻、そして背中のトレーニング効率を高めます。また、下半身のむくみも改善する効果が期待できるので、むくみによってふくらはぎまわりがだるくなる人にもオススメです。
□方法
①ストレッチポールを身体に対して直角に置き、その上にふくらはぎを乗せます。
②両手を突っ張るようにして腰を浮かし、ふくらはぎ全体をストレッチポールに押し付けるようにして身体を前後に揺さぶり、リリースをしていきます。これを1分ほど続けていきましょう。反対側も同様に行ってください。
強く痛むようであれば、腰は浮かさずに膝を曲げ伸ばししながらリリースを掛けていき、強度を調整してください。
4-3.スーパーフィシャル・フロント・ラインの鍛え方
反り腰によって柔軟性を失ったスーパーフィシャル・バック・ラインをリリースしたら、今度は繋がりを意識し、バランスを整える為にスーパーフィシャル・フロント・ラインのトレーニングを行っていきましょう。
4-3-1.赤ちゃんのポーズ
腹筋だけでなく、手足を伸ばすことによって身体前面の筋肉を鍛えることができます。
キツさよりも、丁寧に行うことが非常に重要となります。
□方法
①仰向けになり膝を引き上げます。そして両手を“前ならえ”のように伸ばしましょう。この時恥骨を頭方向へ引き上げるようにすることで、腹筋を意識しやすくなります。
②右手・右足を地面に接地しないようにまっすぐ伸ばしていきます。足関節は90°をキープすることで、腹筋から前脛骨筋、足先にかけての筋肉の繋がりを強化することができます。この状態を10秒キープ3セット行いましょう。(反対側も同様)
※腰が浮くと、スーパーフィシャル・フロント・ラインを上手く鍛えられないだけでなく、腰椎を痛める可能性があるため注意しましょう。
第5章【お腹の筋膜の働き】
まずは背中の筋膜と同様に、お腹側の筋膜の連鎖に関連する筋肉から詳しく見ていきましょう。
□足趾の背側{足趾伸筋群}(足の甲)
↓
□前脛骨筋(スネ)
↓
□膝蓋腱/大腿四頭筋(膝のお皿・もも前)
↓
□下前腸骨棘(骨盤)
↓
□腹直筋(腹筋)
↓
□肋骨
↓
□胸骨(胸前の骨)
↓
□胸鎖乳突筋(首の前スジ)
↓
□乳様突起/頭皮筋膜(耳の後ろ・側頭部)
このように、スーパーフィシャル・フロント・ラインは身体前面の筋肉を覆っています。その役割として主にスーパーフィシャル・バック・ライン(背部の筋膜)とのバランスを取り、重心線(参照記事URL→【姿勢】)より前方に存在する骨格部分、つまり恥骨や胸郭、そして顔を持ち上げることと言えます。
またスーパーフィシャル・フロント・ラインは関連している筋肉からわかるように、体幹や股関節の屈曲、そして膝の伸展や足関節の背屈といった動作を担っているのです。これらの筋肉が弱くなるとどのようなことが起こるのでしょうか?まずはプロポーションの変化から注目すると、“ポッコリ下腹”や“太もも太り”“ふくらはぎ太り”といったことが考えられます。
次に健康面から見ていくと、足を上手く上げられなくなることによる転倒・骨折のリスクや、腰椎の過剰な屈曲姿勢に伴うヘルニアなどの腰椎疾患を発症する可能性が高くなります。
最近多くのメディアで取り上げられているような「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」の原因ともなり得るため、スーパーフィシャル・バック・ラインと同様に柔軟性を改善することから始めてみましょう。
5-1.スーパーフィシャル・フロント・ラインのリリース
5-1-1.うつ伏せお腹リリース(パピーポジション/スフィンクスのポーズ)
猫背姿勢のように背中が丸まることによるストレスによって柔軟性を失った身体前面の筋膜をリリースしていきます。これにより、座り姿勢や立ち姿勢の改善を図ることができます。
□方法
①うつ伏せとなり、両肘を支点にした状態で上半身を起こしていきます。この時お腹に軽く力を入れ、恥骨は床から離さないように注意しましょう。
②上半身を起こしたら両足を足先に向かってゆっくり伸ばし、そして床に着けた両肘を支点に上半身を斜め上方向に引き離すようにし、20秒ほどリリースしていきます。
□ワンポイント
慣れてきたら、両手を支点に行ってみましょう。これにより、スーパーフィシャル・フロント・ラインだけでなく、胸椎の可動域も向上します。
※腰や頸部の痛みを感じたら行わないように注意しましょう。
5-1-2.三日月のポーズ(ランジのポーズ)
“うつ伏せお腹リリース”よりもやや難易度は高くなり、お腹だけではなく股関節前面から脇腹にかけて広範囲にリリースを掛けることができるのが特徴です。
日常生活ではなかなか動かすことができない股関節を開く動きを取り入れることで、座り姿勢などでコリ固まった鼠径部周囲の筋肉だけでなくリンパの流れを改善させる効果が期待できます。“ポッコリ下腹”や“太もも太り”ではいわゆる猫背のような姿勢が多く、この
三日月のポーズによって姿勢改善にも効果的と言えます。
□方法
①股関節を前後に開き、両手を前方に伸ばして手のひらを合わせます。この時前側の膝関節は90°になるよう注意しましょう。そして後ろ足側の股関節を伸ばすように、身体を少し前方に移動させます。
②息をゆっくり吐きながら、合わせた両手を天井に向かって大きく伸ばしながら上半身を後ろへ反らしていきます。息を吐き切ったら元の位置に戻り、これを5回ほど繰り返しましょう。(反対側も同様)
※上半身を反らす際は、お腹に軽く力を入れた状態で胸を前方に突き出すイメージを持つと、反りすぎによる腰痛を防ぐことができます。
5-2.スーパーフィシャル・バック・ラインの鍛え方
猫背姿勢によって柔軟性を失ったスーパーフィシャル・フロント・ラインを整えた上で、衰えてしまった背部のスーパーフィシャル・バック・ラインの筋肉を鍛えていきましょう。
5-2-1.ルーマニアンデッドリフト
主に身体の背面にある筋肉であるハムストリングや大殿筋、そして脊柱起立筋を鍛えることができます。これらの筋肉はスーパーフィシャル・バック・ラインを構成する主要な筋肉で、正しいフォームで行うことにより筋膜の連鎖をより強固なものにしてくれます。それはすなわち姿勢改善であると同時に、アンチエイジングとなる背中の引き締めへと繋がるのです。
□方法
①バーを持ち、足を肩幅に広げて自然に立ちます。この時バーを握る手を順手と逆手にすることで、握力の負担を軽減することができます。
②お尻を後ろに引き、上体を前傾させるようにして股関節を畳みます。この時バーは太ももを沿わせるように手前に引きましょう。
※図のようにバーが体から離れたり、膝が前に出ると大殿筋やハムストリングに適切に刺激を入れることができません。
④足関節から膝にかけて、常に床と90°を保つように意識しましょう。バーが膝を超えるくらいまで下がったら、大殿筋やハムストリングを意識しながらゆっくり元の体勢に戻ります。これを10回3セット繰り返しましょう。
5-2-2.ラットプルダウン
マシンを使って背中の筋肉の代表とも言える広背筋を鍛えていきます。
広背筋は上腕骨に付着しているため、広背筋を鍛えることによって上半身と腕の連動を高めてくれます。
□方法
①重りのピンを適切な重さに調整します。そして身体を固定するためのパットの高さを調整しましょう。ポイントとしてはお腹にパットが当たるまで深く座り、踵を浮かし固定することです。これにより腹部のインナーマッスルである腸腰筋に刺激を入れることができ、トレーニング効率が向上します。
②バーを肩幅の1.5倍を目安に順手で握り、親指を人差し指の横につけたサムアップポジションにしましょう。そして力を入れる際は薬指・小指側を強く意識することで、広背筋の活動を優位にすることができます。
③上半身をやや後方に倒し、胸を前上方に突き上げるようにしながら肩甲骨を寄せて引き下げていきます。この時、肩甲骨の間から脇にかけて筋肉の収縮を意識しましょう。
バーを戻す際は一気に力を抜かないように、ゆっくりと筋肉の緊張を緩めていきます。これを10回3セット繰り返していきましょう。
第6章【筋膜へのアプローチで気を付けるべき事】
トレーニング効率を高めたりダイエットや美容に効果があるだけでなく、コリや痛みを軽減させてくれる筋膜リリースですが、気を付けるべき事が2つあります。
6-1.反動をつけない
通常のストレッチと同様に、動作に反動をつけないように注意しましょう。ゆっくりと時間をかけ、焦らずに行うことが大切です。そしてストレッチを掛けている所を中心に、末端にかけて遠くに引き伸ばされるような感覚を持つことで、より筋膜の存在を感じることができます。
6-2.鈍痛があれば、その部分から重点的にリリースを掛ける
ストレッチポールを用いて筋膜のリリースを行う際、鈍痛を感じる部位があるかと思います。その部分は筋膜の滑走が悪くなり、線維が癒着した、いわゆる凝り固まった部分です。これが身体の連動性を低下させる大きな要因となるため、まずは鈍痛のある部分から丁寧にほぐしていくことが大切です。
第7章【まとめ】
いかがでしたか?
今回は身体の前面と後面にある筋膜の繋がりを紐解き、その繋がりを意識したトレーニングを行うことで、より身体の変化を実感できるようなメニューをご紹介しました。
筋膜は身体全体を覆うボディスーツのような存在です。私生活を含めたストレスのなかで柔軟性を失うことで、その部分だけでなく全身にも悪影響を及ぼしかねません。姿勢の歪みやプロポーションの低下だけでなく、肩こりや腰痛など現れる症状は様々なのです。
「弱い筋肉を鍛える」
「痛い所をマッサージする」
このような対症療法的な方法ばかりに惑わされていませんか?
筋膜に目を向けることで、あなたの叶えたかったものが手に入るかもしれませんよ。
くびれ美人パーソナルトレーナー
山戸