腹圧が決め手?トレーニングするなら知っておきたい腹圧(IAP)のコツ

「最近体重が・・・」

「昔の服が入らなくなった」

「鏡に映った自分の姿にガッカリ」

 

あなたがダイエットを決意した理由は何ですか?

そしておそらく、たくさんの方法を試してきたことでしょう。

 

今までウエストや二の腕の引き締め、そしてバストアップトレーニングなど多くのトレーニング方法をご紹介してきましたが、今回は更にトレーニングを効率的に行うための方法について詳しくご紹介したいと思います。

 

より長くトレーニングと付き合っていくためにケガの予防は不可欠ですが、狙った筋肉にしっかりと効かせるために非常に重要なポイントである“腹圧”の存在を忘れてはいけません。

 

第1章【腹圧とはIAPのこと】

 

皆さんは“腹圧”という言葉を知っていますか?お腹には内臓が収まるように空間があります。そして、その空間が潰れて内臓などの機能に支障を来さないように維持するのが腹圧なのです。

腹圧とは腹腔内圧の事で、IAP(Internal-abdominal Pressure)と表記されることもあります。上述したように内臓を収める空間(腹腔)を維持するために必要であり、上部を横隔膜、下部は骨盤底筋群、後面は多裂筋(背中のインナーマッスル)、前面を腹横筋(お腹のインナーマッスル)で覆われた腹腔は、これらの筋肉が協調して働くことで腹腔内圧を高め、体幹部を安定させるために作用しています。

 

第2章【腹圧(IAP)が抜けるとどうなるの?】

ここで蓋の閉まったペットボトルをイメージしてみましょう。蓋の閉まった状態では、どんなに外圧を掛けても(外側から押す力)ペットボトルが潰れることはありません。

これは体幹の安定している状態を表しており、日常生活における動作で重要となります。勿論、バーベルを使ったスクワットやデッドリフトなど、高負荷のトレーニングを行う際にも欠かすことはできません。

使い分けが大切!バーベルとダンベルのトレーニング効果の違い

このように、腹圧というのはまるでペットボトルの内圧(内側から押し返す力)と外圧が均衡していることと同じように、体幹部分を安定させているのです。

 

しかし蓋を開ける(腹圧が抜ける)と先ほどの頑丈な構造から一転、見事につぶれてしまいます。

つまり形(姿勢)を保つためにはこの内圧(腹圧:IAP)が非常に大切という事です。立つ、座る、歩く、人間らしいすべての動きには必ず体幹を安定させる腹圧の存在があり、この腹圧が弱くなることで猫背などの不良姿勢に繋がってしまいます。

 

第3章【腹圧を意識するメリット】

おそらくこのコラムを見て初めて腹圧という言葉を知った方も多いかもしれませんが、実は人間だけでなく、ほとんどの哺乳類は全身を連動させて動くために腹圧という機能が発達してきました。

 

力を伝えるためには、体幹部分の安定が欠かせません。つまり体幹力が無ければ筋肉が発達しづらい身体となり、太りやすい体質腰痛・肩こりなどの症状を引き起こす原因となってしまうのです。例えばぬかるんでいたり、滑りやすい地面では“踏ん張り”が効かないのはイメージできますよね?そうすると余計に力んでしまい、身体には必要以上の負担が掛かることになります。

 

このように一般の生活においても体幹の安定は必要で、この体幹の安定を引き出すのが腹圧という訳です。姿勢改善やダイエット・ボディメイクを成功させるためにも、初めに取り掛かるべきなのです。

 

Ⅰ.姿勢改善効果

猫背のように背中が丸まってしまった体型や、“おヘソ”が前方に突き出たスウェーバック姿勢の方は、腹圧トレーニングを欠かすことはできません。体幹の安定感が無いことで、身体は自然と“安定しやすいポジション”を探し始めます。そして猫背であったりスウェーバックといった不良姿勢は、体幹の筋力が無いなりに安定感を作り出した結果なのです。

 

つまり腹圧トレーニングを始めとした身体の使い方を習得できれば、もともと取る必要が無いこれらの姿勢の改善を図ることが出来るのです。このように、身体に限らず変化には必ず何か理由があり、その理由を解決しなければ次のステップには進めないのです。

 

Ⅱ.腰痛予防

腰には腰椎と呼ばれる骨が連なるような構造があり、それぞれの間には椎間板と呼ばれるクッションが存在しています。このクッション(椎間板)には弾力があるため、腰を曲げたり反らしたりすることができるのです。そしてその動きをコントロールするために腹圧は必要不可欠という訳です。猫背やスウェーバック姿勢といった変化によって腰椎・椎間板への慢性的なストレスが大きくなり、変形や神経の圧迫といった痛みの原因へと発達します。

 

腰痛以外にも、体幹が安定しないことで膝や首の痛みに発展することもあるため、体幹を維持するためには腹圧の存在が欠かせません。

それでは次に、腹圧を意識出来るトレーニングベルトの効果について説明しましょう。

 

第4章【トレーニングベルトのメリット】

トレーニング上級者が使うイメージがあるトレーニングベルト(パワーベルト)ですが、実際にどのような効果があるのか知らない方も多いようです。そこで少し、トレーニングベルトを使うことによって得られるメリットやデメリットにも触れておきましょう。

 

Ⅰ.トレーニングベルトでケガ予防

トレーニング・フィットネスブームに伴い運動に時間を費やす人口が増える一方で、どうしても増えてしまうのがケガです。ケガをしてしまえば、せっかくトレーニングによって鍛えた筋肉が衰えてしまいます。不良姿勢のままトレーニングを行うことによって腰椎や仙腸関節などの腰まわりに負担が掛かれば、腰痛を発症することもあります。このように腰まわりの負担を減らす役割を担うのがベルトという訳です。

 

Ⅱ.高重量を扱うことが出来る

トレーニングベルトを巻くことによってお腹まわりをギュッと締めるように固定し、腹圧を高めることができます。筋トレを正しいフォームで行うためには腹圧の意識を欠かすことはできません。

例えばバーベルを使ったスクワットでは、通常よりも何kgも重い負荷が関節や椎間板に掛かります。この時適切な腹圧が掛かっていなければ身体を支えることができず、蓋の空いたペットボトルのように身体はつぶれてしまいます。これではトレーニングで高重量を扱えないだけでなく、前述したようにケガのリスクを伴うのです。

 

この時点であなたはベルトが必要と考えることでしょう。しかし必ずしもベルトが必要という訳ではありません。良いことばかりのイメージがあるベルトにもデメリットがあるのです。

 

それは自分の力で腹圧を意識することができなくなること、そして腰まわりに負担が掛からない身体の使い方(正しいフォーム)がわからなくなることです。

 

第5章【トレーニングベルトによるデメリット】

それでは上述したように、ベルトを常時使うことによるデメリットについて解説していきましょう。

 

Ⅰ. 自分の力で腹圧を意識することができなくなる

ベルトを用いてお腹を締めることにより、受動的に腹圧を高めて腰まわりを安定させることができます。この受動的にというのが問題で、自分の力で獲得した動きでなければ日常生活で意識をすることが難しくなります。

 

つまりせっかくトレーニングを行っても、トレーニングの為のトレーニングとなってしまうのです。日常生活の改善や体型の変化に結び付かなければ、せっかくのトレーニングが台無しですよね。

 

Ⅱ. 腰まわりに負担が掛からない身体の使い方(正しいフォーム)がわからなくなる

ベルトを巻くことによって腰部はコルセットを巻いた時と同様に安定し、腰椎や椎間板、周辺の筋肉の負担は軽減します。本来であれば負荷を減らすためには正しいフォームが必要あるものの、ベルトによって外力的に腰まわりが固定されればフォームが多少崩れても違和感が出にくくなり、結果として正しく筋肉に負荷を掛けることが出来なくなってしまうのです。

 

つまりベルトの存在自体が悪いわけではなく、あくまでベルトを巻くことによって誤ったフォームで固定してしまうことが問題なのです。

また、ある研究ではベルトを使用することによって腰まわりのインナーマッスルである内腹斜筋の筋活動が低下したと報告されています。

この事から、

 

高重量のトレーニングを行う=姿勢が良い

 

とは限らないという訳です。

それでもあなたはベルトを使って高重量を扱いたいですか?

 

ダイエットやボディメイクを目指す方にとってはベルトによって一時的に腹圧を向上させるよりも、日常的に腹圧を鍛えてトレーニング効果を高めたほうが良いのです。それでは早速、あなたが取り組むべき腹圧トレーニングをご紹介しましょう。

 

第6章【日常生活で出来る腹圧トレーニング】

いきなり強度の高いトレーニングを行ってしまえば、誤ったフォームによって目的と違う所が鍛えられてしまうだけでなく、ケガに繋がることもあります。そこでまずは腹圧の認識から始めていきましょう。ポイントは簡単。呼吸に合わせてお腹を膨らませれば良いのです。

 

Ⅰ.腹圧トレーニング①(仰向け)

仰向けで行う腹圧トレーニングです。この姿勢ではお腹まわりの動きを意識しやすくなる為、トレーニングの導入として積極的に取り入れていきましょう。

 

□方法

①仰向けになり膝を立て、骨盤と下腹部の境目に両手を置きましょう。この時、膝の間にボールやクッションを挟むと内転筋と骨盤を介して腹横筋を意識しやすくなります。

 

②鼻から息をゆっくり大きく吸います。この時お腹まわりの360°全体に空気が入るようなイメージで膨らませていきましょう。

※お腹に置いた手を軽く押し返すようにすると腹圧を意識しやすくなります。

 

③口をすぼめないよう、なるべく長く息を吐いていきます。この時、臍に向かって肋骨を引き下げるようにすると、腹斜筋と横隔膜を活性化させることができ、腰椎の固定能力を高めます。

※女性なら膣、男性なら睾丸を頭方向へ引き上げると腹圧を意識しやくすなり、より効果を高めることができます。

 

④しっかり吐き切った後に、そこで少し息を止めると(1~2秒程度)腹横筋をより活性化できます。

この時、コルセットを締めるようなイメージで膨らませたお腹の緊張を抜かないよう注意しましょう。

1呼吸を1回とし、10回程度繰り返しましょう。

 

Ⅱ.腹圧トレーニング②(座位)

仕事中や家事などの作業を行いながら意識したい方は、座ったまま腹圧トレーニングにチャレンジしてみましょう。

座るポジションも大切なので、【デスクワーカー必見!正しい座り姿勢】を参考に、股関節の角度が約80°(膝よりも少し太ももが高くなる位置)となるように調整しておきましょう。お腹に当てた指をしっかり押し返すよう意識することで腹圧を高めることが出来ます。

 

□方法

①イスに浅めに座り、背筋を伸ばします。そして下腹部に軽く手を当てた状態で、鼻から大きく息を吸います。この時胸だけでなくお腹まわりの360°全体に空気が入るようなイメージで膨らませていきましょう。

※腹部に当てた指を押し返すことで、腹圧を意識しやすくなります。

 

お腹に当てた指の圧を変えないよう意識しながら、“おヘソ”に向かって肋骨を引き下げるように長く息を吐いていきます。この時、口をすぼめないようにしましょう。

これを1呼吸を1回とし、10回程度繰り返しましょう。

 

Ⅲ. 腹圧トレーニング③(スクワット:立位)

座ったまま腹圧を意識できたなら、次はその状態からスクワットを行っていきます。

日常生活において「立つ」・「座る」という動作は頻繁に繰り返されるため、スクワット動作で腹圧を意識することができれば、姿勢の改善だけでなく今後のトレーニングレパートリーが格段に増えます。

つまりトレーニングを楽しく行う為にも、腹圧を意識したスクワットを覚えておくべきなのです。

 

□方法

①足を腰幅よりやや広げてお腹に手を当て、腹圧を意識しながら立ちます。この時股関節・膝・つま先を揃えるように正面に向けておきましょう。

※立位での腹圧の意識が難しい方は、座って腹圧を意識してから立ち上がるようにしてもOKです。

 

②腹圧が抜けないよう、そして背中が丸くならないように腰を下ろしていきます。膝がつま先より前に出ないよう注意しましょう。そして腹圧が抜けないよう注意しながら元の位置に戻ります。これを10繰り返しましょう。

※頭が下がり過ぎて“お辞儀”姿勢にならないようにしましょう。腰を落とす瞬間、腹圧は抜けていませんか?

 

また、レパートリーとして“かかと”を上げるカーフレイズを取り入れてふくらはぎを引き締めにもチャレンジしてみましょう。

※母指球に体重を掛けることで、ふくらはぎとアキレス腱のラインを引き締めることができます。

 

第7章【身体を変える!腹圧を使ったトレーニング】

ここではストレッチポールを使って腹圧トレーニングを行っていきます。ストレッチポールの代わりにクッションなどを使用してもOKです。

 

Ⅰ.ストレッチポールで四つ這いアームリーチ

四つ這い動作をストレッチポールに両手を乗せた状態から行います。通常の四つ這い動作でも体幹の支持のため腹圧は向上しますが、上肢を不安定にさせることでより鮮明に腹圧を意識することができます。

 

□方法

①ストレッチポールに両手を乗せ、肩の真下に手首、股関節の真下に膝がくるようにしましょう。この時、手と膝はそれぞれ肩幅と腰幅程度に開いておきます。

※この時つま先は立てておきます。

 

②身体が動かないように注意しながら、右手を真っ直ぐに伸ばします。そしてその状態で10秒ずつキープしましょう。この時、左側のお腹に力が入る感覚があればOKです。(反対側も同様)

※反対側も同様に行いましょう。

 

Ⅱ.ストレッチポールを使ったバード&ドッグ

バード&ドッグと呼ばれるトレーニングをストレッチポールの上で行っていきます。姿勢を維持するために肩甲骨や股関節まわりだけでなく、お腹まわりの腹圧を高めた状態でトレーニングを行うことができるので、背中やお尻まわりを鍛えるだけでなく、姿勢改善効果や腰痛予防にも効果的です。

 

□方法

①ストレッチポールに両手を乗せ、肩の真下に手首、股関節の真下に膝がくるようにしましょう。この時、手と膝はそれぞれ肩幅と腰幅程度に開いておきます。

※この時つま先は立てておきます。

 

②背筋を伸ばし、身体が捻れないよう注意しながら手と足をまっすぐ伸ばします。この時お腹に力を軽く入れ、肩甲骨の間やお尻に力が入っていることを意識しましょう。

そして伸ばした手足の肘と膝をおヘソの下でタッチし、再び伸ばしていきます。これを左右10ずつ行いましょう。

※タッチの際少し背中を丸めるように意識すると、背中の柔軟性も向上させることができます。

 

Ⅲ.レッグリーチ&ダンベルローイング

ストレッチポールを使ったダンベルローイングです。背中を主に鍛える種目ですが、腹圧を意識することによって、軽いダンベルでも効果的に僧帽筋や広背筋に刺激を入れることができます。

 

更に下肢を伸ばした状態でキープすることにより、ヒップアップや姿勢改善効果も期待できます。

 

□方法

①ストレッチポールに片手を付き、肩の真下にダンベルをセットします。そしてダンベルをと反対側に足を伸ばします。

※足は“かかと”から遠くを蹴るように伸ばすとお尻の筋肉を意識しやすくなります。

 

②脇を締め、肩甲骨を寄せながら肘を後ろに引いていきます。これを左右10回3セット行いましょう。

 

第8章【まとめ】

トレーニングを効率的に行う為にも、腹圧の意識は欠かすことが出来ません。ただ何となくフォームを真似するだけでなく、本当の意味で根本から身体の使い方を変えなければトレーニングの成果を上げることは難しくなります。

 

トレーニングベルトなどのアイテムを利用することは勿論必要な場合もありますが、あくまでも補助的なもの。初めからアイテムに頼っていては、身体の本当の使い方を覚えるチャンスを失うかもしれないのです。

くびれ美人では、腹圧を意識した赤ちゃん体操(B.Bトレーニング)を取り入れ、身体をより機能的に使えるようなトレーニングも行っています。高重量を扱うだけがトレーニングではありません。姿勢や体型が綺麗な方は、身体の使い方が上手なのです。

 

今回ご紹介したような腹圧を意識しながら行うトレーニングを覚え、是非安全な筋トレライフを過ごしてくださいね!

 

くびれ美人パーソナルトレーナー

山戸