筋トレ中の肩の違和感を放っておいてはいけない理由と対処法
トレーニングをする際、何となく肩まわりがスッキリ動かない。そんな経験はありませんか?
肩を動かすトレーニングと言えば上半身。そして女性が上半身を鍛える理由のほとんどはバストアップをする為と言っても過言ではありません。
このように上半身を鍛えるには、肩まわりの動きはとても重要なポイントとなります。
しかしここで問題となるのは肩の違和感。痛みまではいかないまでも、普段から肩がゴリゴリしたり、何となく引っかかって動きづらいという方は意外と多いのです。
肩の違和感を抱えたままトレーニングを行ってしまうと、知らず知らずのうちにフォームが崩れ、正しいバストアップトレーニングが出来ないだけでなく、痛みへと繋がってしまうこともあります。
そこで今回は上半身のトレーニングにチャレンジしたいけど、肩に不安がある方向けの対処法について詳しくご紹介していきます。
目次
第1章【肩の違和感の原因】
腕をグルっと回してみた時、肩や肩甲骨の音がなった経験がある方は多いようです。しかし現時点では痛みを含め、肩の上がりづらさなど生活に支障をきたすレベルでなければ、気に留める方はあまりいません。
この違和感最大の原因は関節の軸がズレている、つまり関節がハマっていないのです。
肩がハマっていない状態こそが肩や胸まわりの歪みを生み、そしてあなたのトレーニングを妨げてしまいます。肩関節は肘や指のように【曲げる・伸ばす】だけの単純な動きではない為、姿勢の変化や動きのクセに大きく左右されてしまうのです。
第2章【肩関節の構造】
ここまで肩関節と表現してきましたが、実は肩関節はもう少し細かく分類することができます。本章は解剖的な解説が主ですので、ここは読み飛ばしていただいても構いません。
それでは、肩関節の構造について解説していきます。
Ⅰ.いわゆる“肩”とは?
一般的な肩のイメージで言えば、首から腕の付け根までを表現することも少なくありません。しかしトレーニングにおける肩の違和感は、肩甲骨と上腕骨(腕の骨)から構成される関節から生じます。この関節を肩甲上腕関節と呼び、腕を上げたり後ろに引く際に大きな可動域を発揮します。
つまり、肩関節とはこの肩甲上腕関節の事を示すと言っても良いでしょう。
Ⅱ.肩の仕組みは複雑 ~腕と肩甲骨は連動する~
しかし、肩の仕組みはこんな単純なものではありません。骨と骨が構成する関節ではないものの、肩甲骨と胸郭(肋骨)が滑るようにして構成される肩甲胸郭関節もまた、“肩”の動きに大きく影響しています。
※このように肩甲骨は胸郭(肋骨)にぺったりと覆いかぶさっており、腕の動きに合わせて動かすことが出来る。
実は先ほどご説明した肩甲上腕関節だけでは、肩は非常に不安定です。そこで、肩甲骨が腕の動きをアシストするように可動することで、肩関節の安定性を保っています。
股関節と比べると肩甲骨の肩甲窩(上腕骨骨頭を支える面)の関節面は浅いものの、軟骨の一部である関節唇によって肩の安定性は保たれています。しかしそれだけでは不十分のため、腕の動きに合わせて肩甲骨も可動する必要があるのです。
第3章【姿勢から見る肩への不安の変化】
肩への不安感から、トレーニングを満足に出来ないだけでなく、結果が出なかったりケガに繋がってしまえば、当然モチベーションも低下してしまうことが懸念されます。
もしかすると、ただトレーニングのフォームに問題があるだけでなく、あなたの普段の姿勢が招いている可能性もあるのです。
巻き肩と猫背はその原因と考えられています。
Ⅰ.巻き肩と猫背が肩の違和感を引き起こす
そもそも巻き肩とは何かという疑問について解説していきましょう。
巻き肩とは、本来の位置(関節の適合面)よりも肩が前方にズレた状態の事を言います。
前章で少しご説明したように、肩関節には関節唇と呼ばれる軟骨性の受け皿があり、上腕骨の動きを支えています。しかし巻き肩によって肩甲骨・上腕骨が前方にズレることで、関節唇とのストレスが生じてしまいます。これが肩の違和感として現れるのです。
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そして猫背、つまり背中を丸めたような姿勢も、巻き肩を助長してしまうのです。肩甲骨は肋骨の面を沿うように位置しています。猫背姿勢では肋骨の面が更に広がり、肩甲骨を前・外側へ追いやり、そして巻き肩へと発展してしまうのです。
Ⅱ.その原因は体幹力の低下
巻き肩や猫背は生まれつきの身体のクセで、変わらないと思っていませんか?
実は巻き肩や猫背などの不良姿勢はお腹まわりを中心とした体幹の筋力低下が原因であり、姿勢トレーニングを始め、ストレッチによって改善することができるのです。そして丸まった背中を正すためには背中側の筋力だけでなく、腹圧を高めることも大切であることもわかっています。
腹圧とは?
腹腔内圧(IAPとも呼ばれる)のことであり、お腹の内臓を収める空間(腹腔)を維持するために必要な能力の一つ。姿勢維持・体幹部の安定ためでなく、内臓機能を保つためにも重要となる。
つまり、体幹力の低下は腹圧の低下を表しているのです。
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第4章【肩の違和感を取り除くストレッチ】
それではまず初めに、肩の違和感を改善するためのストレッチに取り掛かっていきましょう。
トレーニングをいきなり始めるのではなく、先に肩まわりの筋肉を整えておくことが、肩の違和感を取り除くために非常に大切です。
Ⅰ.大胸筋・小胸筋ストレッチ
肩甲骨と上腕骨の軸を歪ませる要因の1つ“巻き肩”。その巻き肩を助長してしまう筋肉が大胸筋と小胸筋です。それぞれ上腕骨・肩甲骨と胸郭(肋骨)を繋ぐ筋肉であり、バストのボリュームを作ります。
しかし日々の姿勢などが原因でこれらの筋肉の柔軟性が低下すると、バストのボリュームをダウンさせてしまいます。
つまり、あなたがバストアップトレーニングをしなければならない原因を作ったのが柔軟性の低下という訳であり、それと同時に関節の歪みも生じさせているのです。
□方法(右側の場合)
①壁に対して真横に立ち、肘と手を壁に付けます。(肩よりも少し高く上げておく)
②腕は壁から離さないように、体だけ左回りに振り向き、胸を大きく開きましょう。
③ストレッチ感が出てきたら、深呼吸をしながら15秒キープします。(肋骨についている筋肉のため、深呼吸をすることで効率よくストレッチができます)
Ⅱ.上腕二頭筋ストレッチ
肩のシルエットを歪ませる上腕二頭筋。“抱っこ筋”と呼ばれたり、“力こぶ筋”と表現するとイメージしやすいかと思います。
この上腕二頭筋は肘を曲げるのが主な働きですが、その筋肉の走行から、柔軟性が低下することで肩甲骨の歪みを引き起こします。
肘の前面から肩関節の前面(肩甲骨関節上結節・烏口突起)を繋ぐ上腕二頭筋は、肘を曲げて過ごす時間が長い方は柔軟性が低下しやすく、短縮した上腕二頭筋が肩甲骨を前方から引っ張り、こちらもやはり“巻き肩”を助長してしまいます。
そのため、デスクワーカーや子育て期間の方は特にこのストレッチが大切となります。
□方法
①壁に向かって正対し、壁に手を付きます。この時、指を下に向けておきましょう。
※手を付ける位置は肩よりも少し下。こうすることで肩に力が入ってすくむ動きを防ぐことができます。
②手を壁から離さないように、身体を反転させていきます。前腕から上腕に掛けてストレッチ感が出たところで15秒キープしましょう。(反対側も同様)
※少し手で壁を押すと、よりストレッチ強度を高めることができます。
Ⅲ.広背筋・上腕三頭筋ストレッチ
背中の広範囲を覆う広背筋は、姿勢の維持には必要不可欠。骨盤や背骨、肩甲骨、そして脇の下から上腕骨に掛けて走行する広背筋は、肩甲骨の安定性に関与します。
猫背や巻き肩姿勢では広背筋は短縮(柔軟性の低下)しやすく、この短縮によって更に肩甲骨は前傾し、上腕骨も後方へ引っ張られてしまうのです。
これにより上腕骨骨頭は前方へ引き出される形となり、関節の不適合を生じさせるという訳です。
□方法
①イスの前に膝を付き、図のように肘を座面に乗せましょう。
※この時イスが動かないように注意しましょう。
②頭を下に入れ込むように上体を倒していき、両手で肩甲骨の間に触れましょう。
これを15秒キープしていきます。
第5章【肩の違和感を修正する方法とポイント】
バストアップの為に鍛えるべき筋肉はやはり大胸筋。バストの土台となる大胸筋を欠かすことが出来ません。
そして大胸筋を鍛える主なメニューは、ベンチプレス・ダンベルプレスですが、肩の違和感によってトレーニング計画が上手く進まない方の為の改善方法をご紹介致します。
本コラムは既にトレーニングを始めている方向けの内容となっているため、これらのトレーニング方法については割愛しますが、本章の最後にトレーニング方法を記載したリンクを乗せておりますのでそちらをご参照ください。
Ⅰ.ベンチプレス時の肩の違和感
ベンチプレスの動作時に出現する肩の違和感は、やはり上腕骨骨頭の前方滑りから生じます。
このフォームが発生する原因は、肩甲骨の内転(内側へ寄せる動き)不足、そして胸椎の伸展(反らす動き)不足が考えられます。
この2つを改善した場合、
上腕骨骨頭の前方への移動は抑制され、しっかり胸を張れていることがわかります。このように、筋肉はしっかりと拡張することで初めて効率よく鍛えることが出来るのです。
Ⅱ.ダンベルプレス時の肩の違和感
次にダンベルを使って大胸筋を鍛えるダンベルプレス中の肩の違和感についてみていきましょう。
ベンチプレスと同様の、こちらもやはり上腕骨骨頭の前方滑りが問題となります。そして更に、ベンチプレスとの違いは片手でダンベルを支える不安定さ。これにより肩を痛めやすいので、初めは軽すぎるくらいの負荷から始めたほうが良いでしょう。
それではまずは失敗例から。
このように重すぎる負荷では、肩関節の安定を獲得することができません。早い話、持つだけで必死なのでトレーニングする余裕がないのです。
当然胸が張れないため、肩に負荷が掛かり大胸筋を鍛えることは出来ません。そしてただ肘の曲げ伸ばしの動きに限定されてしまうため、三角筋や上腕三頭筋といった目的とは異なる筋肉が鍛えられてしまうのです。
それではこちらはどうでしょうか。
肩が安定して胸が張れるため、効率よく大胸筋を鍛えることができます。
これなら肩関節自体に負荷を掛けることなく安全にトレーニングを実施することができるのです。
このように重量物を扱う際は、まず重さに重点を置くのではなく、正しいフォームを実施できるかが重要という訳ですね。
↓バストアップの為のトレーニングはこちら↓
おまけ【肩を安定させる体幹トレーニング】
しっかりと大胸筋の筋肥大をさせたい方、引き締まった胸まわりを目指している方、このように大胸筋を鍛える目的は人それぞれと言えます。
しかし適切なフォームが出来る身体でなければ、効果が上手く現れなかったり、ケガに繋がることもあるというのは、ここまでご説明してきました。
そこで更にトレーニング効果を高めるために、肩を安定させる体幹トレーニングを2つご紹介していきます。
Ⅰ.四つ這いトレーニング
四つ這いの姿勢によって手を地面に付けることで、肩関節の安定を作ります。四つ這い姿勢は体幹の支持力も高めることが出来るため、猫背などの姿勢が気になる方にとって是非取り入れて欲しいメニューの1つです。
手を付けた状態で身体を後方へゆっくりとゆすることで、肩関節の安定化を獲得した状態を作ることができます。
これにより肩関節周囲の筋肉(ローテーターカフ)を活性化させ、関節の適合性を高めます。
□方法
①肩の真下に手を付き、股関節が90度となる位置に膝をつけた四つ這い姿勢を取ります。
※この時背筋は伸ばし、肘をしっかり伸ばしておきます。
②背中が丸まらないように、手首の根本で地面を押すようにして身体を後方へ移動させていきます。お腹に軽く力が入る意識を持ちましょう。これを10回ほど繰り返していきます。
※手首でしっかり地面を押すことで肩関節のインナーマッスル、そして体幹部との連動が高まり、安定性が向上します。
Ⅱ.オーバーヘッドスクワット
肩関節の適合性が低下すると、肩がすくんで肩こりの原因となることもあります。ここまでご紹介したストレッチ・トレーニングを実施すれば、肩関節まわりの筋肉のバランスは取り戻すことができます。
その最後の仕上げとして行っていきたいオーバーヘッドスクワット。両手を上に上げた状態でスクワット動作を行うことで、肩甲骨の動きをコントロールする僧帽筋(中・下部)に刺激を入れていきます。
肩だけでなく胸椎や股関節の動きも重要となるため、壁を使って実施すると動作のエラー(腕がキープできない・膝が前に出る等)を修正することができます。
□方法
①壁から1足分の距離を取って正対し、両手を頭上へ上げます。そして背筋を伸ばしたまま足幅(スタンス)を腰幅の1.5倍程度開きましょう。※この時の目安は腰を最大限落とした際に膝が90°となる幅。
そして股関節・膝・つま先が45~60°外側を向くようにします。
②頭上に掲げた両手や膝が壁に当たらないように注意しながら、肩甲骨の間の筋肉に収縮感が出る深さまで腰を落としていきましょう。
これを10回3セット行いましょう。
第6章【結論:姿勢の意識が大切】
いかがでしたか?
トレーニングにはそれぞれ正しいフォームがありますが、そのフォームを作るための準備もまた必要なことがご理解いただけたのではないでしょうか。
結局肩の違和感や痛みは、関節が上手くハマっていないことが原因だったのです。
見よう見まねなトレーニングフォームが問題なのは勿論ですが、普段の姿勢で肩甲骨を歪ませる生活をしていては、そもそも正しいフォームを知っていても実施出来ないのです。
トレーニングの時だけ肩を意識するのではなく、常に姿勢から意識を変えることで、結果として違和感や痛みは減少し、トレーニングの成果が出やすくなるという事ですね
もしあなたが普段から肩まわりに違和感を抱えて過ごしているのであれば、是非参考にしてみてください。
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山戸 勝道